半導体産業新聞(8/31号)にインタビュー記事が掲載された

Post date: 2011/08/31 12:51:11

以下、要旨です(コピーは添付):

㈱アナジックス(神奈川県逗子市)は、Webブラウザから使用できる設計再利用に適したアナログ回路設計環境であるAnagix Library Builder(ALB)の開発・販売やアナログファイナライザのカスタムサポートなどを行っている。2011年度の見通しや中長期展望などについて同社代表取締役の森山誠二郎氏に聞いた。

――事業概要について。

森山 創業前からアナログ回路設計はWebベースに移行すると考えていた。創業当初はPDKのドキュメント作成やSPICEモデルのコンサルティングを行っていたが、設計資産を共有し活用できるアナログ回路設計環境の開発がより重要と考えるようになった。設計資産を再利用する際に必須の設計文書の作成を容易化することに注力し、10年にWebブラウザから使用できるALBを開発した。

これまでのIC設計は、少品種大量生産を前提に主に大手企業が行ってきた。ベンチャー企業が少量生産の高付加価値製品を設計しようにも、EDAが高額で資金的に困難だった。IC開発の裾野を広げるためにはEDAコストを下げる必要がある。現在、ALBと安価なPCベースの設計ツールを統合するためにALTAを開発している。今後、中小企業・大学向けに非常に低価格で販売していく。

――10年度の業績についてお聞かせください。

森山 複数の大学のアナログ回路設計を行う研究室でALBが設計資産の蓄積に試用された。法政大学理工学部電気電子工学科の半導体システム工学研究室では、ALBをベースに設計を効率化するための研究に活用されている。

企業では受託設計会社で回路設計にALBが適用され、設計コストの低減に寄与した。また、Cadence Virtuosoとの連携を図り、既存のEDAツールを補完し、再利用のための文書作成とデータ管理を容易化するソリューションとしてアナログファイナライザをALBベースで開発した。

――11年度の見通しは。

森山 安価なPCベースの設計ツールでIC設計を可能とするALTAを投入し、IC設計ユーザーの裾野を広げたい。現在は一部の利用者にβ版で提供しているが、ALTAを含んだ新ALBを11年8月に正式リリースし、12年度までに30ライセンスの販売を目指す。ALTAがサポートするPCベースのツールは現在LTspiceのみだが、今後対象を増やしたい。また、ほかの設計ツールで作成された設計データを相互に利用でき、Cadence Virtuosoとも共存できるヘテロジニアスな設計環境に発展させていくつもりだ。

さらに、ALBとALTAを活用した設計サポートを通じて、ユーザー自身でアナログICの設計ができるよう人材育成に協力したい。設計をALBで行い、設計報告をALB上に作成し、設計ノウハウを再利用可能な設計資産としてユーザーに提供していきたい。

半導体ファブは安くなっており、設計やEDAコストが削減できれば国内でもIC設計は可能だ。ALTAや設計サポートを手がけることで、これまで高額なEDAコストが足枷となり、ICの設計ができなかったユーザーにもう一度IC設計に取り組んでもらいたい。

――中長期的展望を。

森山 国内の大学では、高レベルなアナログ回路設計の研究開発が行われている。しかし、中小ベンチャーとの接点は少ないのではないか。大学とアナログ設計技術を必要としている中小企業の橋渡しをしたい。そのために設計の共通基盤としてALTAを含めてALBを提供したい。高付加価値製品の開発を行うベンチャー企業にALBを使っていただきたい。大学ではVDEC経由でCadenceなどEDAベンダーツールを自由に使える。その上、ALBを併用すると中小企業との共同開発が可能になり、企業からの依頼研究や新たな研究開発につながるのではないだろうか。

さらに、ALBの上で設計の知識やノウハウとともに、実際の回路設計データに触れることができる実践的な教材を大学の先生方に作っていただき、電子ブックとして購読者に提供できないかと考えている。定期購読の仕組みが出来れば、著者と読者の間にパイプができる。大学は研究成果を活用でき、中小企業には開発力を存分に発揮できる設計環境を提供したい。 今後NPO設立も視野に入れ、実現を目指した方策を検討していく。多くの方々のご支援とご協力をいただきたいと考えている。