ミニマルファブ・シャトルサービス

ミニマルファブは、LSIを1個から製造できる画期的な生産システムです。製造期間が現状で10日程度と非常に短いのが特徴です。産総研以外では、東京三鷹にある横河ミニマルアプリケーションラボで、デバイスを試作できます。

この、横河ラボをお借りしてミニマルファブを使ったLSIデバイスのシャトルサービスを企画しております。2021年9月から試行を開始し、2022年度に正式運用を企てていました(「ミニマルSOI CMOS試行シャトルのご案内 」参照)。詳細は、シャトル計画 をご覧ください。

しかしながら、2021年7月の#1は2枚試作するも、プロセス不良により失敗。2021年12月の#2もVIA不良により失敗。2枚のうち1枚を評価ボードで評価するも、まともな測定はできず。2022年3月の#3はVIA問題を回避するため、配線をML1のみで行いましたが、新たなプロセス問題により、まともな評価はできませんでした。以来、プロセス・デバイス担当者は地道な努力を続け、明るいニュースも聞いておりますが、シャトルサービスの試行を再開できる状態にはまだ至っておりません(2022年11月現在)。

横河ラボで製造に使えるプロセスは、産総研が開発したTechnology2013とTechnology2018をベースにした、PMOSプロセスとSOI CMOSプロセスです。シャトルの試行は、SOI CMOSプロセス(TiNゲート2層AL、ゲート長10um程度)で行います。

このシャトルでは、オープンな開発環境を用意します。少量多品種のLSIの製作を容易にし普及するには、オープンな開発文化を醸成することが不可欠だと考えます。プリント基板を使ったボード設計では、市販部品を利用できますが、自分でLSIを作製する場合、部品をすべて用意しなくてはなりません。現在、すこしずつ部品を整備している段階なので、ボード設計とは比較にならない厳しい状況です。そこで、皆さんに協力いただいて部品を整備したいと考えております。シャトルはそのための手段でもあります。部品の開発、とりわけアナログ回路の設計は知識と経験が必要ですが、幸い、LSI設計を経験した退職者もいます。電子回路設計に興味のある若者も一定数いると思います。ミニマルファブを使ったLSI開発において、オープンな協力関係ができ部品や設計ノウハウが蓄積すれば、少量多品種のLSI開発はずいぶんやりやすくなるのではないでしょうか。

今回のシャトルでは、ファブ(ラボ)と秘密保持契約(NDA)を結ぶ必要はありません。ミニマルファブ用PDKは、オープンソースの無償ツールに対応しているので、設計ツール(ミニマルEDA )に費用はかかりません。設計環境を自前で用意しなくても設計ツールを使えるように無償のEDAサーバーも用意しています。

設計例と、それをミニマルEDAサーバで試すことのできる設計環境の作りかた(ツールのインストール、PDKの設定、設計データの取得まで)は、設計環境の準備と設計例 をご覧ください。

シャトルの試行には、設計データをオープンにすることを条件に、無料で参加していただくことができます。企業からの参加は、アナジックス(sales@anagix.com)またはロジックリサーチ(sales@logic-research.co.jp)にご相談ください。