最新ニュース(2025/3/11):
お知らせ
camenzindさんの「アナログチップを設計する」の翻訳 (URL送付申し込み)
(株)アナジックス は、LSI設計のためのEDA開発を行うとともにお客様の設計環境の構築を支援します。アナジックスの目標は、従来型の企業にはできない数量の少ない高付加価値LSI開発のサポートです。アナログを中心とするLSI回路・レイアウト設計を得意としますが、普通の形態のEDA販売や、設計受託は行いません。オープンソースEDAを活用したローコストの設計環境を提供し、お客様自身がLSI設計ができるように設計技術をお伝えします。
少量多品種LSI開発のために、料理のようなオープンな世界を作りたいと考えてます。LSIの世界でも、熱心な参加者が増えれば、よいお手本が盛んに作られるだろうという楽観的な見通しのもと、その一助となるべく、よい”お手本”作りを目指してます。まだ開発途上ですが、 2024/7/11に開催された「第5回オープンソースEDAフォーラム」の懇親会でライトニングトークをしました。
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過去の講演:RISC-V Days Tokyo(2021/4/23)での「オープンハードウェア開発のためのオープンソースEDAサーバ 」講演です。
少量生産のLSI開発のためには、設計資産(IP)を共有し再利用する必要があり、OSEDAの利用が必須である。OSEDAの普及を助けるためにEDAサーバを立ち上げた。少量LSIオープンハードウェアにおいて、アナログIPの共有と再利用を可能とするためにJupyter Notebookを用いた回路設計知識の共有にも取り組む。ミニマルファブとミニマルEDAについても紹介しています。この時点では、PMOSプロセスを紹介してますが、ミニマルファブ・シャトルサービスでは、SOI CMOSを採用します。
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作成中のフォームに必要事項を記入いただければ、情報をお送りします。それまでは、support@anagix.comに連絡してください。
アナジックスのなぜに答える
なぜ少量多品種LSIの開発にこだわるのか
→ LSI開発はわくわくする面白いものだと思いますが、大規模化・寡占が進んだため、開発に参加することは、限られた人だけの特権になってます。大量生産に従事している人たちは規模と納期の重圧に耐えて楽しいどころではありません。一方、少量多品種は、ロボット化により無用とされるリスクが少なく、電子回路設計という社会的に認知された技術として面白く、そして尊敬と信頼に基づく人間関係を構築でき、感謝されることは生きがいとなります。
アナログ設計において、共有と再利用がなぜ必要か
→ 高付加価値の少量多品種LSIを開発するために、すべての部品を自ら開発することは不可能です。ほかの人が開発したものを再利用し、高付加価値の部分にリソースを集中することが不可欠です。陳腐なものを作ってもあきられます。何か新しいものでなくてはつまりません。
共有と再利用がうまく行っているように見えないのはなぜか
→ 再利用が嫌なのは人のやったことは信用できないからです。そのために苦労してスケジュールが読めなくなるくらいなら、自分でやったほうが良いと考えます。情報を共有できるようにするには、知識と経験を持った人が、他の人がわかるように情報を加工する必要があります。無償でも有償でも、割に合わない仕事です。第1に、人のために働く理由がありません。第2に長い時間と労力を費やして得た情報を、ほかの人に(ましてや無料で)共有するのは損です。第3に、再利用を許した人から質問されたり批判されたりするのはウンザリです。これらは現在主流の価値観であり、このままでは、共有と再利用はうまくいきません。
共有と再利用を実現するにはどうすればよいか
→ 共有と再利用で期待されているのは、機能をブラックボックス化し、誰でも間違いなく使えるようにすることでしょうが、ブラックボックスのままでは無理なのであきらめましょう。そのかわり、ブラックボックスをなくしホワイトボックスにかえましょう、といっても何のことかわからでしょう。ソフトウェアの世界でいう、ブラックボックステストとホワイトボックステストの対比が参考になるかもしれません。
具体的にどうすればよいか
→ 企業内では、共有と再利用がうまく行っている場合もあります。分割された組織のメンバーは、勉強会や実務を通じて共通の知識を持ち、共有財産を利用する際に、回路ブロックの機能、実現方法、問題点などについて多くの説明を行う必要がありません。助けが必要なときは、共通の利益に向かっているので、上司や同僚であれば仕事として取り組んでもらえます。社内でしか通用しない世界を作り、従業員を企業にしばりつけることも容易です。企業内(特に大企業)でこの仕組みを使って少量多品種に取り込むことはしません。大企業では、設計部門だけでなく、製造、販売など多くの人員をかかえており、大量生産品でなければ経済的にペイしないからです。設計部門がスピンアウトしてファブレスになった場合でも、高賃金の従業員はできるだけ量産設計に振り向けたいので大企業の下請けになるケースが多いと思います。
共有と再利用を実現し、少量多品種LSIを成功させるには
→ 1.高く売れる少量多品種に取り組む
このためには、より多くの人が取り組める機会をつくるしかないと思います
2.NDA不要のファブを使う
3.信頼できる人の作った部品を使う
誰のどれが信用できるでしょうか?
4.部品をブラックボックスではなくホワイトボックスとして扱う
5.そのためには、基礎知識を共有する(勉強する必要あり)
6.ホワイトボックスとして記述された部品しか使わない
7.ホワイトボックステストを設計テストに取り込む
NDA不要のファブはあるのか
→ 米国のSkywater 130nmプロセスがGoogleの後押しでNDA不要。2020年11月からオープンソースEDAを推進するeFabless社が窓口となってシャトルサービスを開始してます。森山のRISC-Vスライド のp9参照。
国内では、MakeLSIが窓口となって、フェニテックセミコンダクター(株)のプロセス(0.6umCMOS)などを共通に使えるよう1umのルール(OpenRule1um)を定義し、NDA不要にしている。ミニマルファブのSOI CMOS(横河ラボ)もNDA不要である。
なぜオープンソースEDAを推進するのか
レイアウトのPCellがわかりやすい例ですが、CadenceのPCellは、ライセンスを購入しなければ使えません。少量多品種に取り組もうとする、個人、ベンチャなどが最初から利用するのは困難です。オープンソースのKLayoutのPCellならば、だれでも無料し使用し、レイアウト情報を共有し再利用することができます。
EDAサーバは何の目的か
オープンソースEDAは、ベンダーの商品と違って、ソースからインストールしなくてはならないこともあります。OSが異なる場合、面倒なパッチをあてなくてはならない(そのための情報を探すのが一苦労)のも普通です。サポートしてくれるベンダーは居ないという根本的な問題もあります。EDAサーバでは、LSI設計に使われるオープンソースEDAを整備しているので、インストールの手間なく誰でも簡単に最新のオープンソースEDAを試すことができます。しかしばらばらの目的で使っても、それだけで終わってしまいます。
EDAサーバの真の目的は何か
共通の目標があれば、利用者の利害に一致するところができます。オープンソースは、責任をもってサポートするベンダーは居ません。これをカバーするために利用者同士で助け合うことが、オープンソースEDAを使って行く上では非常に重要です。共通の目標は、NDA不要なPDKを使ったハードウェア開発です。EDAサーバの利用者のコミュニティを作る共通基盤となることが、EDAサーバの真の目的です。